地方4拠点に続き、ソウルドアウトは2011年7月大阪、2012年1月福井に営業所を開設します。
ソウルドアウトには、拠点拡大のエリアを決める際には、いくつかのデータを掛け合わせてはじき出す独自のアルゴリズムがあります。GDPや県内広告費はもちろん、楽天市場の出店数やリクルートのサービスへの掲載数などの視点が入ります。それらのデータを基にして次に展開する拠点を導き出します。
しかし、福井県はそのアルゴリズムで導いたリストにあがっていませんでした。それでも、そこに出店したのはなぜか。自他共に認める荻原の“ひと好き”の一面が起因していました。
オプト時代、いっしょに働いていた女性社員が、故郷福井に帰るため、オプトを退職したという話を荻原は耳にします。彼女の働きぶりも可能性も知っていた荻原は、さっそくそれをソウルドアウトの幹部陣に話します。
荻原 「そうすると『それは、いい機会じゃないか』という話になったんです。さっそく彼女に電話をして、『仕事にまだ就いていないなら、いっしょにやらないか』と声をかけました。これが、福井営業所開設のきっかけです」
すでに開設している地方4拠点と同様に、福井も“ひとり営業所スタイル”。福井での展開を彼女にすべて任せます。しかし開設してみて荻原は驚きます。自分のアルゴリズムでは測れなかった、大きな可能性を知ることになったからです。
荻原 「福井は非常に伸びていきました。素晴らしい商品を持っている会社も多く、チャレンジ精神旺盛な社長もたくさんいました。県内の内需に頼るだけではなく、ネット通販に挑戦して県外のお金を取り込もうとするビジネススタイルが活発でした」
これまでの経験則にはない地方の可能性の指標を、荻原は手に入れます。続いて、神戸、札幌、京都へと進出。一見、順調にみえますが、けっしてその歩みは順風満帆というわけではありませんでした。地方への進出が進むなかで、一緒に大きくなってきた地方の中小企業が他エージェンシーへ移ってしまうケースが出てしまったのです。
荻原 「あれ、ここまで一緒に歩んで、両社で成長してきたのに、どうしてなんだ……と思い、強いショックを受けました。でも、理由は分かっていました。社長が期待する成果を上げられなかった。つまり当時の僕らの力では、期待値まで伸ばしきれなかったんですね。その事実はきつかった。なにより期待にこたえられない辛さがあって、泣きたくなった……」
しかし、これまでも危機をチャンスに変えてきた荻原。ここでも、自分たちの弱みを冷静に分析し、次へのステージに必要なものを見極めていきます。