AIツールの活用で、誰もが最速で最高の結果を量産できる世界へ。時間をかけて100点満点を取る必要はない。

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2020.01.14
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自分の仕事に誇りを持ち、専門性を追求する。「Professional」では、各領域の専門家に迫ります。今回はデータを活用したデジタルマーケティング支援に取り組む株式会社WACULの取締役CIOである垣内勇威さんにお話を伺います。

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垣内勇威(かきうちゆうい)
株式会社WACUL取締役CIO
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垣内勇威(かきうちゆうい)
1984年生まれ。東京大学を卒業後、株式会社ビービットに入社。大手クライアントのWeb改善 コンサルティングに携わる。2013年に株式会社WACULに入社、取締役に就任。新規事業や新機能の企画・開発およびWeb戦略コンサルティング事業を担当。

中小・ベンチャー企業のWEB施策には、「勝ちパターン」のキャッチアップが不可欠

ー 株式会社WACULの事業内容を教えてください。

「テクノロジーでビジネスの相棒を一人一人に」というビジョンを掲げ、AIなど最新の技術を使って、さまざまな業務をサポートするサービスの開発・提供に取り組んでいます。その中でも現在は、デジタルマーケティングのサポートをするサービス「AIアナリスト」の提供に力を入れています。

ー AIアナリストとはどんなサービスですか。

AIアナリストは「Google Analytics」※1と連携し、AIが自動でWebサイトの改善を提案してくれるサービスです。提案する内容は、問い合わせフォームの位置の変更、CVR※2が高い特定のページへの流入強化など、具体的なものばかりです。成果予想も具体的な数字で表示するので、コストと成果のバランスを考えながら改善に取り組めます。

AIアナリストの他にも、SEO※3対策を自動化するサービスや、記事コンテンツを自動で生成するサービスなど、AIを使ったデータの分析を基盤に据え、「ビジネスの相棒」として使っていただけるようなサービスの開発・運営を行なっています。

ー 様々なサービスを提供する背景を教えてください。

誰でも80点を瞬間的に取れる世界を作りたいと思っています。

私はもともと前職で、デジタルマーケティングのコンサルティングをしていました。成果へのコミットを第一に考え、お客様がKPI※4に定めるWebサイトの流入数増加やCVRの改善にどうすればコミットできるのか考え、様々な打ち手を提案していました。そんな毎日を送る中で、いつも同じ提案をしているなと気が付いたんです。Webサイトには、成果をあげる勝ちパターンが存在する。そのパターンさえ踏襲すればどの企業も、もっと成果をあげられるのではと思うようになりました。

ただ、たくさんの会社がある中、人力で提案して回れる数には限界があります。そこで、自分がいつも提案しているノウハウを、自動でお客様に提供できるシステムを作れないかと考えました。それによって、多くの企業に成果をあげるノウハウを届けられるようになります。高いコンサル料を払い、時間をかけて分析しなくてもサービスの導入だけで成果をあげられるようにしたいと思ったんです。

特に、中小・ベンチャー企業のWeb担当者のほとんどは、サイトを作ったはいいものの、何をどうすれば改善されるのか、打ち手に迷っています。大企業のように日々マーケティング施策の立案や効果のレポーティングをする専任の担当者を採用している会社は少なく、専門知識のない人が兼任することも珍しくありません。また、予算も限られており業務の代行をお願いできる状況でもありません。そんな人たちでも利用できる、安価で効果的なサービスがあれば、100点満点を取るのは難しくても、80点くらいなら瞬間的に取れる世界にできるのではと思っています。
 

ゴール指標を元に、「やらないこと」を明確にする。

ーなぜ中小・ベンチャー企業では80点が取りづらいのでしょうか。

過去のデータを正しく活用できていないことが原因の1つです。多忙ゆえに時間がなく、成果をあげている他サイトはおろか、自社サイトの現状も分析できていないケースが多いです。サイトの分析業務の経験がない人が運用を任され、どうしていいのかわからず改善が進まないケースもあります。その結果、流行りの施策に流され、よくわからないまま成果に繋がらない施策に手をつけてしまうのです。

専任担当者がいる場合でも、うまく行かないケースが多いですね。特定のサービスに「だけ」精通している人材を登用しがちだからです。いくらサービスそのものが使いこなせたとしても、取るべき施策の判断にはビジネス的な視点が必要です。それがなければ本当のデジタル人材とは言えません。効果の薄い施策を回すことになってしまいます。

ーどうすればデータを有効に活用できるのでしょうか。

まず、見るデータを決めるべきです。Google Analyticsには、分析可能な項目が100程度ありますが、その全てを同時に見ながら施策立案はできません。何を成したいのか、ゴールの指標を明確に決め、そのための項目に絞ってチェックするべきです。実際、私が見ているデータは5つしかありません。それで十分なのです。

また、Webサイト上のお客さんの動きを分析する際も、膨大なデータを見る必要はありません。サイトに訪れたユーザーの中から3名程ピックアップし、その動きを見るだけで十分です。

見るべきデータを決めたら、次は施策を回す段階です。その際もサイト内の全てのページの改善に一気に取り組むのではなく、最低限必要なページに絞って取り組むべきです。極端な話、反響の獲得であればトップページと問い合わせページだけあれば事足りるので、まずは両ページの改善に全力を注ぐのです。その上で、SEO対策のコンテンツ拡充など考えていけばいいと思います。
 

勝ちパターンのキャッチアップが、最速で成果を出す方法

ー具体的にどうすれば改善できるのでしょうか。

サービスを使うのが早いと思います。長年デジタルマーケティング業界で分析を続けてきた結果、私は成果を上げるための「勝ちパターン」があると思っています。しかし、多くの中小・ベンチャー企業は、コストも時間もかけてすでに確立されているこの勝ちパターンを自分たちで模索している状態、いわば車輪の再開発をしているように思います。自社でデータを見ながら試行錯誤して改善することも可能ですが、すでに勝ちパターンがあるので投下するリソースがもったいないです。

AIアナリストでは膨大な数のサイトを分析した結果、どの種類のサイトなら何を直すべきかパターンに分けて管理しています。ECサイトなら、扱う商品の種類で「理性的」「感性的」の2つに分類し、それぞれで異なった施策の提案をします。

「理性的」なECサイトとは、ユーザーが様々な商品を比較・検討できるサイトのことです。例えば、電化製品を販売するサイトですね。その場合、ユーザーとしては全ての商品を比較検討するとなると、見るべき情報量が多く、何で選んでいいのかわからなくなります。その場合、大切なのは見える情報を絞るということ。一気に表示できる商品の数を少なくしたり、ランキング形式でトップ5の商品だけ見せることで、CVRは改善できます。

「感性的」なECサイトは、主観的に欲しいものを決めることができるサイトです。アパレルブランドのECサイトが代表的ですね。主観で選べるため、情報が見やすい形で大量にある方が好まれます。そうなると今度は情報を絞らず、写真だけ並べ、いろいろなバリエーションの中から商品を選べるようにすべきです。

すでに世に出回っている情報から勝ちパターンは見えています。その情報をキャッチアップすることが最速で成果を出す方法だと思います。

テクノロジーでビジネスの相棒を一人一人に

ー今後、デジタルマーケティングの分野がどうなっていくのか、見通しを教えてください。

個人的には、検索で流入を取るのが難しくなってくると思っています。デジタルシフトが進み、大企業がどんどん検索市場にお金を突っ込んできていますから、コストをかけられない企業は太刀打ちできなくなってくるのです。

そうなった時、中小・ベンチャー企業は今以上に、既存顧客との繋がりが必要になってくると思います。その手段はメルマガかもしれないし、FacebookやInstagramなどのSNSかもしれないし、なんなら手紙かもしれません。とはいえ、膨大な数のお客様の一人一人に細かく対応するのは物理的に不可能です。ルーティン化したコミュニケーションを定期的に取り続け、提案に興味を持ってくれた人たちへしっかりアプローチする、といった仕組みづくりが重要になってくるのではないでしょうか。

ー今後の目標や成し遂げたいビジョンについて教えてください。

直近3年ほどの目標は「自社サイトでマーケティング施策をやるなら、AIアナリストは入れてないと話にならないよね」と言われることです。そのため「誰でも最速で80点を取れるサービス」として認知され、もっとお客様に選んでもらえるようになりたいと思っています。

長期視点で見ると、「テクノロジーでビジネスの相棒を一人一人に」というビジョンを実現させるため、現在展開しているサービスにこだわらず、企業が抱えるあらゆる困りごとを解決するサービスの開発・提供がしたいです。例えば、契約書一つ作るときでも、考えながら作ると時間がかかる。その際、すぐに過去のノウハウを参照できれば、作業時間を何倍にも短縮できるはずです。マーケティング以外の分野でも、誰もが最速で最高の結果が出せる世界を実現させたいと思っています。


Private Talk

趣味は多く、休みの日はいろいろなことをしています。中でも一人で黙々と取り組めることが好きですね。一時期は漫画を書いていましたし、最近は写真を撮りに行ったりもします。家族で旅行に行っても、自分だけ別で行動し、いろいろな場所を撮影して回ります。特に動物が好きで、動物園に行ったりバードウォッチングをしたりして写真を撮っていますね。生き物への興味から、つい最近は熱帯魚を飼い始めました。


※1…Googleが無料で提供するWebページのアクセス解析サービス
※2…Webサイトに発生したアクセスのどれだけが、商品の購入や申込みに達成したかの割合を表す指標
※3…検索エンジン最適化
※4…key performance indicator(企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標)
 

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