北川:最後に、スペースマーケットさんの今後の展望をお聞かせ下さい。
井上:まずは多くの方にサービスを使っていただきたいですね。「スペースマーケットっていいよね」といってくださる方は増えていますし、一度体験すればヘビーユーザーになってくれることも多いのですが、なかなか最初の1回のハードルが高いです。
より多くの人に使っていただくために、「スペースマーケットを使うとどんな体験ができるか」の発信に注力していきたいと考えています。使う方がイメージしやすいようなアプローチをしていきたいですね。
例えば、子どもを連れたママ同士で集まるママ会です。小さい子どもがいるとお店に遠慮してしまうし、誰かの自宅で開催しても、呼ぶ方も行く方も気を遣い合ってしまう。それなら、スペースを一日借り切って、第三者的な場所でやるという選択肢を提案したい。時間関係なく過ごせますし、キッチン付きのレンタルスペースなら料理もできる。
他にも、英会話の授業をするなら、賑やかなカフェではなく静かな個室スペースをレンタルしたらいいし、商品の撮影をしたい場合はマネキンのある部屋を借りたらいい。スペースを使っていただく体験を当たり前にしたいですね。
北川:今まではレンタルスペース無しでやっていたことが、スペースを利用することでより快適にできるようになるんですね。ただ場所を貸すだけでなく、設備や特性を踏まえて、場所の使い方自体もプロデュースされていく。
井上:そうですね。実はイベントプロデュース事業にも力を入れて取り組んでいます。企業の社員総会やアニバーサリーなど、イベントの企画から運営まで、全てやらせていただきます。イベントプロデュース市場自体はすでに競合がたくさんいますが、他にはない多彩な会場のご提案ができるので、ユニークさを売りに差別化しています。世界観に合わせて、会場の演出だけでなく料理や飲み物も作りますよ。
北川:なるほど。結婚式なども式場を使わないオリジナルの形が流行っていますし、今後も需要が高まりそうですね。
井上:もう一つ力を入れているのが、体験型マーケティングです。一般的に、消費財系のマーケティングはまずCMで認知を獲得し、商品を流通に乗せたりインターネット検索させたりして購入まで繋げています。しかしその間に、体験を通じた態度変容を起こすことも非常に重要だと思います。それができるのは我々しかいないと思っています。
我々のサイトには1万2000のスペースが掲載されており、そのスペースに商品を置くことができます。例えばビールだったら、パーティー会場に置いておいて飲んでもらえるようにする。街中やスーパーの試飲コーナーでは、一人で飲んで「美味しいな」と思って終わってしまうかもしれませんが、パーティースペースにおいてあれば一気に何十人という人が試飲してくれることになります。その場で味の感想や好みを言い合いながら体験してもらえば、記憶に残りますよね。購買の一歩手前のファネルまで気持ちを持って行くことができるんです。
家具や家電も同じです。家電量販店でテレビを見ても自宅での使用イメージは湧きにくいですが、レンタルスペースの部屋に置いて実際に見られるようにすれば、家で使う感覚で体験できます。実際に、スペースに導入していた数百万円するアイランドキッチンが売れたこともありました。体験することで消費者心理は大きく変わります。
北川:体験の力ですね。弊社のお客様でも、良い商品をお持ちなのにマーケティングが課題で広まらないことがあります。特に地方のお客様に多いので、スペースを使って物産展のように、地方の良い商品をアピールできたら面白いかもしれないですね。
井上:ポップアップストアもできると思っています。地方の町村レベルだとなかなか都内にアンテナショップを出すのは難しいですが、スペースを使えば一日だけ出店することも可能です。スペースという資産を活用した可能性を、これからも追求していきたいですね。