シェアリングエコノミーで「スペース」が持つ可能性を広げる。消費者の心を動かす“体験”を提供したい。

スペシャル対談
2019.09.24
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「世界中のあらゆるスペースをシェアできるプラットフォームを創る」というミッションを掲げ、時間単位で簡単にスペースの貸し借りができるサービスの運営・開発を行う株式会社スペースマーケット。今回は、事業展開の舵取りを担う執行役員・ビジネス開発部部長の井上真吾さんに、ソウルドアウト株式会社で同じく執行役員の北川共史が、経営側近としての心構えや、シェアリングエコノミーの可能性についてお話を伺いました。

井上 真吾(Shingo Inoue)
執行役員・ビジネス開発部部長
北川 共史(Tomofumi Kitagawa)
執行役員

シェアリングエコノミーを実現するプラットフォーム

北川:まず、スペースマーケットさんの事業内容について改めて教えてください。

井上:あらゆる建物や空間などの「スペース」をシェアすることができるプラットフォーム「スペースマーケット」のWebサービスとアプリを運営しています。シェアリングエコノミー型のサービスで、スペースを「借りる側」と「貸す側」をインターネットを通じてマッチングさせる仕組みです。

現在登録されているスペースは1万2,000件ほどあり、住宅や会議室など一般的なものから、古民家や廃校、お城、無人島など幅広いジャンルが揃っています。個人、法人問わず時間単位で手軽に借りることができる点と、競合と比較しても掲載数が豊富な点が特徴ですね。

お客様の用途は様々です。パーティー、会議などが主ですが、最近増えてきているのはコスプレ撮影。世界観に合った古民家や廃墟を探されている方が多いです。我々も考えつかないような使われ方でした。コスプレ撮影の利用が増えることで、スペースを提供するホストもコスプレ撮影場所としてアピールをするようになりました。スペースを使ってくれるゲストのおかげで、ホスト側もそのスペースの使い道を知り、新しいウリとして提案していくようになっていきます。

北川:スペースをシェアすることで、新たなニーズを見つけることもできるんですね。その中で、井上さんはどのような役割をされているんですか。

井上:自分はビジネス部門の担当として、基本的には売り上げを追っています。部門を営業推進部とビジネス開発部の2つに分け、数字を伸ばすための営業戦略の構築や、新規事業の開発などを主に行っています。
 

可能性を大きく広げるインターネットの力

北川:井上さんのご経歴や、スペースマーケットさんに参画された背景を教えてください。

井上:もともとインターネットビジネスに興味があり、NTTの子会社を経てヤフーに入社し、広告事業のビジネス開発を行っていました。諸事情で一旦退職しましたが、戻ってからはビジネス開発の責任者をやらせていただいていました。

北川:インターネットビジネスには、どうして興味を持たれたんですか。

井上:将来的に自分でビジネスを展開したいと思っており、時代の流れを考えるとWebサービスには関わっておくべきだと思っていました。いくつかのアプローチを検討しましたが、最初に広告領域に携わるようになりました。

また、個人としての可能性を最も広げてくれるのはインターネットの力だと思っていました。インターネットを通じて、人が自分の持っている能力を発揮し、差別化できる。今でもそれは、すごく良いことだと思っています。

もともと以前から知り合いだったスペースマーケット代表の重松から、シェアリングエコノミー事業を立ち上げたと聞いていました。

シェアリングエコノミーは物を「所有」から「共有」にするので、効率化が求められ、市場自体は縮小するだろうと予想していました。しかしその一方で、大きな可能性も感じたんです。ニーズを拾いながら可能性の周りを固め、新しい市場を創出できれば、事業を広げていけるはずだと考えました。加えてサービスがプラットフォームなので、言語や国民性の縛りなくグローバルに展開できることにも魅力を感じました。昨年、自分自身のキャリアを模索していたこともあり、入社を決めました。

北川:入社されてからは、どのようなことに取り組みましたか。

井上:実際は、新しいことをするより、足元を固める段階でしたね。既存事業の仕組み化に注力してきました。今期からビジネス開発部を新設したので、今後は新しい企業のアライアンスなどにも取り組もうとしています。
 

経営者と現場の翻訳者として

北川:井上さんは経営陣を支える立場として、普段どんなことを心がけていらっしゃいますか。

井上経営者側の意図を、現場側が納得できるよう「正しく伝える」ことを大切にしています。立場によって視点が違うので、WHY、WHAT、HOWを現場側に合わせて噛み砕き、理解してもらえるように翻訳するイメージですね。現場から経営者側へ何かを伝える場合にも言えることだと思います。

北川:すごく大事ですね。僕自身も執行役員という立場で、同じ考えを持っています。ソウルドアウトの場合、WHYの根底は理念としてしっかり浸透しているのですが、理念に対して今やっている取り組みがなぜ必要なのか、うまく伝わらないこともあります。

先日、大きな組織改革を行った際にも、意図が現場のメンバーにきちんと伝わるよう注力しました。役員と現場間でのギャップは誤解から生まれていることがほとんどなので、おっしゃるように翻訳が大切だと思います。

僕の場合、日頃から全体の20%の時間は部下に使うように心がけているのですが、井上さんは普段からメンバーとの接し方で気をつけていることはありますか。

井上:自分も、部下と接する時間は定期的にとるようにしています。上司とはできるだけ時間の無駄がないような話し方をしますね。曖昧な質問には曖昧な返答が返ってくるだけなので、オープンクエッションは避け、課題に対しての解決策となぜそうするかの意図を簡潔に伝えるようにしています。

あとは、経営者と従業員はお互いを否定してはいけないと思っています。経営批判は絶対にダメだし、部下の批判も良くない。同じ方向に向かって進めるよう気をつけています。

人と接するとき、向き合うとお互い良いところだけでなく悪いところも見えやすくなるじゃないですか。そうではなく、ゴールを設定して横並びで並走していくことが大事だと思います。それが、事業スケールしていく上でも一番良い方法だと思うんですよ。

北川:立場の違う者同士が、同じゴールを見て走れるようにすることが大事ですよね。
 

スペースを使った「体験」を提案していく

北川:最後に、スペースマーケットさんの今後の展望をお聞かせ下さい。

井上:まずは多くの方にサービスを使っていただきたいですね。「スペースマーケットっていいよね」といってくださる方は増えていますし、一度体験すればヘビーユーザーになってくれることも多いのですが、なかなか最初の1回のハードルが高いです。

より多くの人に使っていただくために、「スペースマーケットを使うとどんな体験ができるか」の発信に注力していきたいと考えています。使う方がイメージしやすいようなアプローチをしていきたいですね。

例えば、子どもを連れたママ同士で集まるママ会です。小さい子どもがいるとお店に遠慮してしまうし、誰かの自宅で開催しても、呼ぶ方も行く方も気を遣い合ってしまう。それなら、スペースを一日借り切って、第三者的な場所でやるという選択肢を提案したい。時間関係なく過ごせますし、キッチン付きのレンタルスペースなら料理もできる。

他にも、英会話の授業をするなら、賑やかなカフェではなく静かな個室スペースをレンタルしたらいいし、商品の撮影をしたい場合はマネキンのある部屋を借りたらいい。スペースを使っていただく体験を当たり前にしたいですね。

北川:今まではレンタルスペース無しでやっていたことが、スペースを利用することでより快適にできるようになるんですね。ただ場所を貸すだけでなく、設備や特性を踏まえて、場所の使い方自体もプロデュースされていく。

井上:そうですね。実はイベントプロデュース事業にも力を入れて取り組んでいます。企業の社員総会やアニバーサリーなど、イベントの企画から運営まで、全てやらせていただきます。イベントプロデュース市場自体はすでに競合がたくさんいますが、他にはない多彩な会場のご提案ができるので、ユニークさを売りに差別化しています。世界観に合わせて、会場の演出だけでなく料理や飲み物も作りますよ。

北川:なるほど。結婚式なども式場を使わないオリジナルの形が流行っていますし、今後も需要が高まりそうですね。

井上:もう一つ力を入れているのが、体験型マーケティングです。一般的に、消費財系のマーケティングはまずCMで認知を獲得し、商品を流通に乗せたりインターネット検索させたりして購入まで繋げています。しかしその間に、体験を通じた態度変容を起こすことも非常に重要だと思います。それができるのは我々しかいないと思っています。

我々のサイトには1万2000のスペースが掲載されており、そのスペースに商品を置くことができます。例えばビールだったら、パーティー会場に置いておいて飲んでもらえるようにする。街中やスーパーの試飲コーナーでは、一人で飲んで「美味しいな」と思って終わってしまうかもしれませんが、パーティースペースにおいてあれば一気に何十人という人が試飲してくれることになります。その場で味の感想や好みを言い合いながら体験してもらえば、記憶に残りますよね。購買の一歩手前のファネルまで気持ちを持って行くことができるんです。

家具や家電も同じです。家電量販店でテレビを見ても自宅での使用イメージは湧きにくいですが、レンタルスペースの部屋に置いて実際に見られるようにすれば、家で使う感覚で体験できます。実際に、スペースに導入していた数百万円するアイランドキッチンが売れたこともありました。体験することで消費者心理は大きく変わります。

北川:体験の力ですね。弊社のお客様でも、良い商品をお持ちなのにマーケティングが課題で広まらないことがあります。特に地方のお客様に多いので、スペースを使って物産展のように、地方の良い商品をアピールできたら面白いかもしれないですね。

井上:ポップアップストアもできると思っています。地方の町村レベルだとなかなか都内にアンテナショップを出すのは難しいですが、スペースを使えば一日だけ出店することも可能です。スペースという資産を活用した可能性を、これからも追求していきたいですね。
 

パンくず

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